小川信治展|Look Back on the GALLERY CAPTION




小川信治展 1999年2月27日ー3月27日
写真は移転前、岐阜市若宮町の丸平ビルの壁面に描かれた、小川信治さんのwall painting です。いまやこの旧スペースを知る方も少なくなってまいりました。元某生命保険会社だった雑居ビルの2階の2部屋を展示スペースとして使用していました。現在のギャラリーも、それぞれに趣を変え、空間に変化をもたせているのは、若宮町のスペースからのなごりです。左手の明かりがもれている部屋が窓のある小部屋で、写真手前へ進むとメインの展示スペースがありました。
階段を上がったところに、Rの特徴的な壁面がありました。この展覧会で小川さんは「不思議の国のアリス」を「WITHOUT YOU」のモチーフとして、アリスとチェシャ猫との会話の場面を精密に模写しながら、アリスの姿とセリフを消すという、ペン画を出品。そして画面から消されたセリフは、作品を飛び出して外の廊下に描かれました。




Would you tell me please, which way l ought to go from here?
I don’t much come where.
… so long as l get somewhere. ギャラリーは移転しましたが、いまも謎かけのように、作品は残されています。

*** WITHOUT YOU 我々が信じて疑わないものや、普遍的に変わらないと信じているもの、例えば情報や記憶といったものがすでに異形のものへと変化してしまっているのではないか、という直観に突き動かされて制作を始めたシリーズです。有名な映画のワン・シーンや、歴史的な記録の写真、家族のおもいでのアルバムなどをモチーフとして、伝統的な油絵や鉛筆デッサンでリアルに描いています。 ただし、登場人物の一人が常に欠落しているという1点をのぞいて。




Perfect World 世界は完全なものでしょうか。 それとも不完全なものでしょうか。 これは答えのない問いなのかもしれません。 しかし、切り取られた風景にある操作を加えることによって、世界にエンドマークをつけることで世界を「完全な」ものにしてしまうことは可能ではないでしょうか。 Perfect World は古い絵葉書や写真にそこに写されている人、物などの一つをそのままそっくりにその画面の中に描き込んでいます。 小川信治